2023.02.11コンサル
私が現在力を入れている仕事(ここでは「コンサル」と表現します)と設備設計とで何が大きく違うかと言うと、扱う建物のタイミングです。ざっくり言って、設備設計はこれから作ろうとする建物を扱い、コンサルは(竣工した後の)稼働している建物を扱います。ここでひとつやっかいなのは、それぞれ別の内容を「省エネ計算」という同じ言葉で表現していることです。
設計でいう省エネ計算は「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(いわゆる建築物省エネ法)に基づいて、これから建てようとしている建物がある一定の省エネ基準に達しているかどうかを判定するものです。いろいろな種類や地域の建物を横並びに見ることができるように、ある稼働条件を定めてエネルギーの使用量を推定し、基準と比較します。
対して、コンサルが扱う省エネ計算は、個々の稼働している建物が実際に消費しているエネルギーについて、どんな対策をすることでどの位エネルギーを減らすことができるのか、という試算をすることを指します。また「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(いわゆる省エネ法)に基づき、年間のエネルギー使用状況を報告したり、エネルギー管理者を選任することを義務付けられている事業者がありますが、この報告の中長期計画策定の支援をすることもあります。ちなみにこの法律は、建物を使って事業を行う事業者ばかりでなく運輸に関わる事業者も対象となります。
建物って、建てる迄は「建築」ですが、建てた後は「不動産」になる。だから、それぞれを扱う感覚が違ってくる場合もあるのですが、建築に関わる方に対してでさえ、コンサルについてうまく伝えることができなかったりで、いろいろと思うことがあります。
若い頃に設計した建物で、空調能力が足りないという失敗をしました。(関係者の皆様、その節はご迷惑をお掛けしました。)店舗の1階、ドアの開け閉めによる外気流入の想定が甘かったことによるものです。足りないことはすぐわかります、空調が効かないので。でもこれ、機種が大き過ぎる!という状況だったら、まず問題にならないことがほとんどでしょう。ちゃんと空調が効いているので。でも、大き過ぎることも実は問題なのです。大き過ぎることがなぜよろしくないかと言うと、機器にはそれぞれ効率よく運転できる状態があって、小さな負荷で運転していると効率が大きく下がるものがあるからです。施主(事業者)に無駄にエネルギーを使わせていることになるのです。また自動制御にも難しさがあります。設計から竣工にかけて、もちろん施主へのヒアリングに基づき、効率よく設備を運転するためにも最適な設定をするのですが、竣工時の考え方のまま使われ続ける建物ばかりではありません。稼働状況などは時と共に変わるものです。それに伴って自動制御も設定を変えた方がよい場合もありますが、そのまま使っている状況をこれまでいくつも見てきました。
設計って、想定することしかできない部分が多くあります。施主や意匠設計の頭の中でどんどん形が膨らんでいき、それが図面として示されると、設備設計がその空間に必要な機器、器具、配管、配線を検討していきます。例えば空調の検討をするために熱負荷計算をしますが、これも「想定」の上に成り立っているものです。統計値やこれまでの知見を使ってその室の熱負荷を計算で求め、その室に必要な空調機器を選定します。今ここに無いものを作るのですから想定するしかないんです。想定するしかないけど、想定したとおりにはならないこともある、ということです。
エアコンなら、今は勝手に省エネでもなんでもやってくれますからいいのですが、その建物のためにオーダーメイドされた設備って、付いていればいいんじゃなくて、いかに使いこなすかが大切だと考えます。想定とは違う建物の稼働状況など、設備運転のミスマッチを見つけて改善すること、最適な状態で設備を使い続けることのお手伝いをする、これもエネマネコンサル、省エネコンサルの仕事と考えています。